続・念ずれば花開く
江戸中期、大阪の町人によって懐徳堂という学問塾が開設されて
いました。いまなら大学レベルの研究機関で哲学や人間学が基礎に
なっていましたが、その中の一人、中井竹山の言葉に「苦しみて後
悟り、倒れて後興(お)く」というのがあります。昔の人は良いこ
とを言いましたね。人間には修行が必要だ、可愛い子には旅させろ、
若い頃の苦労は買ってでもせよとも言います。それでも思うように
いかないのが人生です。しかし失敗は成功の母。七転び八起きして
いるうちにブレークスルーが来ます。発明の多くはこうして生まれ
ました。危機はチャンス、火事場のばか力、背水の陣では信じられ
ないような力が発揮されます。
失望のなかにこそ大望を生ず、艱難辛苦汝を玉にす、咬竜の淵に
沈むは高く昇らんがためなり。だからあきらめてはいけない、忍耐
に学び、耐えるほどよく育つのです。
念じてのち花開くまでには、こうした寒風に立つ一時期がしばし
ば訪れます。しかし冬来たりなば春遠からじ。手習いはじめの和歌
といわれるのが王仁が詠んだ歌です。
「難波津に咲くやこの花、冬こもり今は春べと、咲くやこの花」長
いつらい冬を経てやっと春がやってきた、絢爛たる花が春を彩るで
あろうという意味です。不二家など創業者一族経営が話題になって
います。逆境を経験しない経営者は、やはりどこか甘いところがあ
るのでしょう。最近はいわゆるエリート街道を歩んできた人たちに
も同じく危うさを感じるのです。 堀井 良殷