過ぎたるは及ばざるがごとし
お金持ちになって好きなものを腹いっぱい食べたいと思っている人がもし居たら、その人はとんでもない勘違いをしていることになります。常にひもじい思いをしている粗食の人と比べると、飽食組は明らかに寿命が短いのです。お金持ちになると長生きできないというのは、なんという皮肉なことでしょう。常に運転手つきの高級車が送り迎えにくるという人も長生きできません。太りすぎ、運動不足は命の大敵です。ルネッサンス期の西洋名画に描かれている美女はふっくらとして胸もおなかも豊満ですがこれはかって貧しい食事が当たり前であった頃、豊満さは富の象徴であり、美しさでもあったのでしょう。しかし今はメタボリックシンドロームといっておへその周り男85センチ女90センチ以下にすることが求められています。内臓脂肪を溜め込むことは病気の始まりです。おいしいステーキ、魚のトロ、いくら、ケーキなどはみんな敵だといっていいでしょう。ある大金持ちが山登りをしました。頂上でふもとの茶店で買ったおにぎりを食べてなんというおいしさだろうと感嘆しました。それに比べて毎夜のように食べる高級料亭の味気ないこと。人間の幸せというのはそういうものなのだと悟ったそうです。
別の例ですがある司法関係者が、バブルの頃遺産争いで兄弟姉妹が醜い争いを繰り広げるのをいやというほど見てきたそうです。ところがバブルが過ぎ去りデフレの世になると遺産争いはグンと下火になりました。親貧しくして孝子出ず、親の遺産が多いことが必ずしも子供の人生を幸にするとは限りません。もちろん恒産なくして恒心なし、衣食足りて礼節を知る、ある程度のお金は必要です。しかし過ぎたるは及ばざるがごとし、食事のとり方、お金の持ち方、暮らし方にしても何事も足るを知ることが大切だと思いませんか?
堀井良殷